彼女はハンドバッグに手を入れ、しきりにまさぐっています。
口紅を探しているようだ。
「おかしいねーえ。どこにいったんでしょう。ちゃんと入れたはずなのに・・・」
「ありますよ、大丈夫!落ちついて、落ちついて。よーく捜してみることですよ」私はもう必死。
なぜなら、もし口紅が出てこなかったら、と考え、不安だったのだ。
せっかく少々気を取りなおしかけた彼女なのに、また「ディスペラータ」の連発が始まるではないか、と案じた。
でも口紅はやっと見つかった。
ホッ・・・、そして、バンザーイ!
ベージュがかったピンクの口紅をつけたシニョーラ。
「どうかしら?」と初めて微笑んだ。
「ステキ!すっかり若々しくなって元気も出てきたみたい。よくお似合いですよ、その口紅」それは真実の発言だった。
バスに乗り込んできたときとは別人のようにイキイキとした顔になっていました。
その後、「ディスペラータ」の眩きは消えてしまったのです。